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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)1025号 判決 1964年3月06日

上告人

柴田清

右訴訟代理人弁護士

黒沢平八郎

被上告人

柴田トワ

被上告人

柴田久子

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人黒沢平八郎の上告理由第一点および第二点について。

上告人が亡柴田仙太郎の実子でない旨の原判決引用の一審判決の事実認定は、挙示の証拠により肯認できるから、原判決に所論の経験則違反の違法がなく、また、原審が所論の釈明をなさず、所論の証拠申請、口頭弁論再開申請を許容しなかつたからといつて、これに審理不尽の違法があるということはできない。上告人と亡柴田仙太郎とが父子関係である旨の戸籍記載を訂正した後でなければ、右の関係を否定できない旨の所論は、独自の見解であつて採用できない。論旨はいずれも理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 草鹿浅之助 城戸芳彦 石田和外)

上告代理人黒沢平八郎の上告理由

第一点 原判決は釈明権の不行使による審理不尽と事実誤認の違法がある。

原判決はその理由において一部字句の挿入以外は原判決と同一の理由に基き控訴人(上告人)の請求を失当として排斥すべきものと判定した旨判示した、依つて右引用した第一審判決の判示理由について検討するに、本件においては主たる請求、予備的請求のいづれについても、上告人が亡仙太郎の実子であるか否かが前提となる争点であるが、後に述べる三事実を推認して上告人が仙太郎の長男たることを認定するに足らずとして上告人の全主張を却けた、

判示理由中にもいう通り「元来戸籍は国民の親族関係を公示し公証する記録であつてその記載は事実の身分関係を表示すると推定するのが相当である」従つて

(1) 親子の如き身分の存否については、戸籍記載を唯一の証拠として身分関係の対世的統一取扱を確保することにし先づ人事訴訟を以て確定の上戸籍訂正をしてからでなければ一切の訴訟において親子でないことを前提とする判断をなし得ないと解するが妥当だと考える。(有斐閣法学全集25谷口知平著戸籍法七五頁)本件の親子関係の存否確認が財産関係上の紛争の先決問題に過ぎず且戸籍上の父母の何れも死亡し利害関係人に於て確認判決を得て上告人の戸籍を消除することができないとしても戸籍法第一一三条によつてその手続が第一審に於ける判断以前に採らるべきであるにも拘らず原審は何等之等の点に考慮していない違法がある。(以下省略)

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